5月23日の日米首脳会談後のバイデン米大統領との共同記者会見の際に、バイデン氏から「日本が(国連の)常任理事国になることを支持するとの表明があった」と岸田文雄首相が述べられました。しかし、「敵国条項」がある限り、それは現実的でないと言われています。
今回は、この「敵国条項」を「United Nations(国際連合)」が発行している「(国連憲章)」を引用しながら紹介致します。
「敵国条項」とは?
「敵国条項」というのは、「Charter of the United Nations(国連憲章)」の53条と107条、及び、77条の一部を指しています。
- 53条 敵国が戦後決まったことを覆そうとしたりした時は、国連加盟国は制裁できるとした
- 107条 敵国に対しておこなった戦後措置は憲章によっても無効にならないという
- 77条 敵国から分離される地域について定めた
ここでいう敵国ですが、第二次世界大戦中に「Axis Powers(枢軸国)」であった国々のことで、ドイツ、イタリア、日本の主要3カ国(三国同盟)と、対ソビエト連邦の為に参加した、ハンガリー、ルーマニア、スロバキア、ブルガリア、ユーゴスラヴィア、クロアチア、そして公式参加では無いが協力的だったフィンランドを指していると言われています(参照:Britannica)。
ただ、これらの国々は既に国連加盟国である為に、この扱い自体に大きな疑問符が付きながらも今だに廃止されていません。
「Charter of the United Nations(国連憲章)」を見る
翻訳版は非常によくできていますので敢えて訳し直す必要性は無いですが、やはりオリジナルの英文を国連の公式サイトから見てみることが大事だと思います。
要約しますと、(国連)安全保障理事会の許可無しで、107条に従って侵略行為への対処をしてはいけない。ただし、敵国は除くとなっています。
つまり、敵国とされている国々に対しては有無を言わさず実力行使ができるが、敵国じゃない国々に対しては安全保障理事会の許可が絶対必要とされています。
要約しますと、第二次世界大戦中に敵国だった国に対して戦後どのような措置をしても、(国連)憲章で無効にすることはできないといってます。
つまり、戦勝国が敗戦国に何をしても許されるといった過激な内容になっています。
まあ、これは敵国によって分離されていた地域のことを記載しています。
ただ、ここでも第二次世界大戦中の敵国という言葉が使われ、この条文が改正されていないので、前述した国々は敵国認定のままとなっています。
このように、国連公式サイトでも「敵国条項」がはっきりと残っています。
改定、或いは、削除の意向はあるようですが(国連総会は賛成している)、やはり常任理事国である、アメリカ合衆国・イギリス・フランス・中国・ロシアの5カ国の満場一致が必要なので、やはり現実的に難しいですね。
常任理事国は最初から同じ?
国連の常任理事国は5カ国ですが、設立当初から実はメンバーが変わっています。
「ヤルタ会談」でアメリカ合衆国、イギリス、ソビエト連邦の代表が戦後処理の話し合いをしたことが国連発足になりました。
お気づきのように、ソビエト連邦は既にありません。その中の中心国だった、ロシアが後を継いでいます。
また、最初の5カ国は「ヤルタ会談」の3カ国に加えて、フランスと中華民国でした。
しかし、中華民国は内戦に敗北し台湾へと移動することになりました。それでも、長らく中華民国が常任理事国でしたが、1972年のニクソン大統領が中華人民共和国を訪問したことで、常任理事国がチェンジとなりました。
こういった背景から、常任理事国が変わるという可能性はあります。今の世界情勢ですと、日本が第6番目とするのか、或いは、あの国とチェンジになるのか・・・。そうなると鍵は中国が賛成するかどうかですね。