知床半島の沖合で観光船「KAZU 1」が沈没して10数日が経過しましたが、行方不明者の捜索が続いております。GW返上でウトロ漁業協同組合も海上保安庁に協力をされていますが、新たに鹿児島から新日丸とはくよう3000が5月上旬に到着するようです。
筆者は『一級小型船舶操縦士』の免許を持っていて20トンまでの船(クルーザー級)なら操船できます。船舶免許の学校で8日間の合宿で取得したので、実際の操船技術は海の男には及びませんが、そこの教官は全員、元帝国海軍の軍人さんでした。
寡黙で厳しい感じでしたが、怒鳴らず丁寧な指導でした。その方々が何よりも大事にしてと言っていたのが、「救命胴衣は絶対着用」、「救命浮環は必須」、「海が荒れてたら絶対出航させるな」でした。KAZU 1はなぜこんな基本的な事すら守れていなかったのでしょう?
さて今回は、この「新日丸」と「はくよう3000」をご紹介したいと思います。
多目的作業船 新日丸
新日丸は『深田サルベージ建設』の多目的作業船です。船体表記はこの会社名ですが、所有と管理はこの会社の関連会社である『オフショアエンジニアリング』になっています。
主な業務内容はROV (Remotely Operated underwater Vehicle)の作業母船です。ROVはそのまま日本語訳で「遠隔操作型無人潜水機」と呼ばれていますが、最近はドローンが普及したこともあり「水中ドローン」と呼ばれることが増えているようです。
ROVの母船機能以外にも、各種調査や深海での作業も行いますし、大型ウインチを搭載しているので曳航作業も可能です。
特徴としては、広い作業甲板と大容量のタンクによる洋上補給や作業甲板に調査機器・建設機器を搭載して大水深で定点保持装置を使用して各種調査・作業を行うことを得意としている(引用元:日本作業船協会)。
総トン数 | 697 |
---|---|
国際総トン数 | 997 |
全長 | 61.01m |
幅 | 11.80m |
深さ | 5.45m |
巡航速力 | 10.00kt |
最高速力 | 15.03kt |
定員 | 40名 |
乗組員 | 8名(甲板部4名・機関部3名・司厨長) |
船籍 | 東京都 |
船級 | NK |
船行区域 | 近海区域(国際航海) |
連続航海距離 | 12,000マイル |
建造年月 | 2013年10月 |
主機 | ニイガタディーゼル 6L28HX 1,471kW(2,000ps)×720rpm ×2基 |
補機 | 主発電機:AC450V 60Hz 450 kVA×1,800rpm (ヤンマー)×3基主発電機:AC450V 60Hz 450 kVA×1,800rpm (ヤンマー)×3基非常用発電機:AC445V 60Hz 40kVA×1,800rpm (三井造船)×1基 |
推進機 | 可変ピッチ360°アジマスプロペラ×2バウスラスター:8t 可変ピッチプロペラ×1(電動油圧) |
航海計器 | Dynamic Positioning System(K-Pos)×1レーダー(ARPA装備)×2ドップラースピードログ×1測深機×1カラープロッターシステム×1ADCPカラー魚探×1 |
DPS (ダイナミックポジショニングシステム) | KONGSBERG SIMRAD社製測位装置 タイプ:SDP11 オペレーションモード: オートポジション、オートトラック、フォローターゲット ジョイスティックシステム レファレンスシステム:DGPS、HiPAP |
甲板機器 | 甲板ウィンチ:7t×2スターンローラー:50t 3.0m×φ1.5mトーイングウィンチ×2: 巻き能力45t(0-4m/min) 14t(0-11m/min)ブレーキ:90t 容量:1000m×φ2.0m×長さ50mm |
使用燃料 | A重油 |
燃料タンク | 560.84m³ |
清水タンク | 424.57m³ |
通信設備 | 船舶電話:(TEL&FAX)424.57m³GMDSS A3、気象ファクシミリ、テレビ・ラジオ共視聴装置 |
ROV はくよう3000
新日丸が搭載しているROV「水中ドローン」は『はくよう3000』という。
はくよう3000の機能は以下の通りであります。
最大使用深度 | 3,000m |
---|---|
電動油圧ユニット | 150馬力 (75馬力油圧ユニット 2基) |
ペイロード | 200kg |
メイン・左右スラスター | 4基 |
上下推進スラスター | 3基 |
マニュピュレーター | マルチプル型7 ファンクションコントロール2基 (最大可搬重量:250kg) |
カメラ | HDズーム & フォーカスカメラ 1台 高感度白黒カメラ 1台 CCD広角カラーカメラ 3台 CCD広角白黒カメラ 2台 |
3000mまで潜れるということで、今回の知床沖に沈没している『KAZU 1』の捜索などにもその能力を発揮できると思われます。
また左右スラスターを4基、上下推進スラスターを3基装備しているので、水中でも比較的スムーズに動くことが可能です。
また必見は、マニュピュレーターを2期装備していること。これはいわゆる「腕」で、左右2本のアームがついています。
このマニュピュレーターの性能は、深海サンゴを一本ずつ丁寧に採取することができるくらい精度の高いものです。
また、カメラの映像の鮮明さも以下のようなレベルで水中でも細部までわかる機能です。
はくよう3000の活躍に期待しましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、「【KAZU 1】知床半島沈没船、捜索協力の新日丸&はくよう3000とは」をご紹介させて頂きました。
水中の捜索は非常に困難を極めます。新日丸とはくよう3000が頑張ってくれることを祈りましょう。